8時半ごろ起床。
胃潰瘍であちこち体が痛む。ひとまず薬を飲んで朝食を摂り、その後薬局に昨日処方された心療内科の薬を受け取りに行った。
歩いている間、背中が丸まっていることに気づく。足取りも重く、痛む体を庇うような歩き方になって、高村光太郎が随筆の中で、雪に残された内臓が悪い人の足跡はすぐにわかると書いていたことを思い出す。
先日主人と観た「座頭市物語」でも、平手造酒の内臓の不調を察しとった座頭市のシーンが印象に残った。
この天知茂演じる平手造酒の美貌と、病弱という設定が私としてはとてもツボで、座頭市にも勝る魅力を放つキャラクターだなと感じたのだけれど、Wikiによると、天知茂は澁澤龍彦や三島由紀夫もお気に入りの役者だったのだという。
なんとも思いもがけないところで人間の嗜好というものは繋がっているものだなと思ったのだった。いかにも彼らが好みそうな、ダンディで美しい俳優で、こうした稀有な役者は、もはや数えるばかりとなってしまった。
そうして薬局で薬を受け取って、増えてゆく一方の薬にため息が出る。
抗精神薬ばかり増やす方針がよくわからないのだけれど、発達障害にうつ病にPTSDに心因性非てんかん発作に、パニック障害と、あらゆるメンタルの病気を抱えている人間には、これほど強力な薬を使わないとどうしようもないのかもしれない。
特に心因性非てんかん発作に関しては研究もあまり進んでいないし、効き目の強い抗精神薬で抑えるしかないらしい。それでも抑えられていないというのが現状なのだけれども。
それから昼間に二階堂奥歯『八本脚の蝶』を読み進めたのだけれど、どうにもnot for meだった。
詳しくは書かないけれど、日記を電子書籍で書籍化するかどうか、少し考えたいと思って手に取ったのだが、あまりにも内容が薄すぎて、軽薄な自己顕示と自己陶酔に終始していて、その割に量がやたらと多い。
ネットに腐るほどいる、自意識と美意識を拗らせすぎた人間の末路なんて自殺しかないのは明白だし、冒頭からその若い娘特有の過剰な自意識が嫌というほど伝わってきて、男女を問わずそういう人間に苦しめられ続けてきた身としては、とても正視に耐えるものではなかった。
そういうわけでお口直しに内田さんの新刊『大切なこと』を読み切った。
内田さんの本はこれで4冊目。
個人的には戸建てでの暮らしよりも、マンションでの生活の方が親近感を抱いて読めたのだけれど、お庭の様子など随所に素敵な要素が盛り込まれていて引き込まれた。
それでも私が惹かれるのは内田さんの繊細なメンタリティなので、もっとそういう部分についてより深く触れた箇所があればいいのにと思ってしまった。
全体的にコロナ禍の不安もあって、これまでよりも気持ちのゆとりのなさや、緊張感の感じられる文章で、読者としては癒しを求めて読んでいることもあり、マンションでの生活を描いた本の方が好みだなと思う。
それから詩を投稿しようとしていたのだけれど、胃潰瘍になったことを実家にも知らせた方がいいだろうかと思い、連絡をしたら電話がかかってきて、ふたたび悩まされることになってしまった。
親を許すしかないという思いをもってしても、それでも耐え難いことはある。詳しくは書かないでおくけれど、どうにもやり場のない感情ばかりが渦巻いてしまった。
リビングへ戻って嘆息していると、主人が部屋から出てきてしばらく話した。
主人と話しているうちに、親との関係を良好なものに改善することは難しいこと、主治医から云われたように今は親から逃げるしかないこと、私たちふたりの夫婦関係を良い状態に保つことが、今の私にとって癒しとなることを告げられた。
またドクターストップがかかっている中で、私の実家への帰省を促したことを悪かったとも謝ってくれた。もう二度と実家に帰省しなくていいとも云ってくれた。
夫婦別姓が叫ばれているのが今の時代だけれど、私は姓を変えて本当に良かったと思っているし、主人と結ばれて幸せだと思っている。
せめてこの夫婦関係だけはなんとしてでも守り抜きたい。それが私の一番の務めだし、それ以上の価値なんてどこにもない。
神道を奉じる以上、実家と距離を置くことに強い罪悪感を抱いていたのは確かだけれど、私の主治医から境界性パーソナリティ障害と見立てられた母と、これ以上深い関わりを持ち続けても、メンタルは参ってしまう一方なのだと思う。
毒親という言葉はあるけれど、幼少期を振り返ってみると、むしろ精神疾患を治療しないままの母親に育てられた虐待児と云う方が正しいのかもしれない。
とにかく今は少しでも距離を置いて過ごしたい。
死にたいという気持ちはいまだに抱いているけれど、それでもこのまま死ねば親に殺されるのも同義で、それはそれで癪だ。なんとか自分の生を生きていかねばならない。
その糧として役立てられるものは何にせよ役立てていきたい。
今は仮面ライダーオーズを主人と観ていて、プライドが高いわりにお姫様のようにか弱いアンクが可愛らしくてずっと観ていられる。
そうして少しでも心の糧となるものを大切にして日々を過ごしたい。
うつの病状が悪くてなかなか思うように本も読めないし、自分の手で糧を得ることが難しい状況ではあるけれど、それでもフィクションを杖として、なんとか生きていきたい。