ここ数日というものの、おおよそ良いことがなくてメンタルも落ち込んでいたのだけれど、重い足取りで薬局に薬を受け取りに行った帰りにポストを覗くと、NHK全国短歌大会の内定通知が届いていた。
まだ最終的な結果は3月26日にならないと分からないのだけれど、たとえ入選止まりだったとしても、それでも嬉しい。
最近は短歌を詠むモチベーションが歌会ぐらいしかなくて、ほとんど詠めていなかったのだった。
自分自身の短歌が拙いことは、プロの歌人の作品を読めば読むほど嫌というほど思い知らされたし、公募に出そうと思っても「この私の腕前じゃどうせダメだ」と諦めることが何度もあった。
今回それでもNHK全国短歌大会に投稿したのには訳があって、愛読している萩原慎一郎さんの歌集『滑走路』が背中を押してくれた。
眠れない夜に、心が参って死にたくなった夜に、何度この歌集に救われたか分からない。
萩原さんは生前NHK全国短歌大会に投稿して、華々しい結果を残しておられる。
無所属の私がどこまで進めるか分からなかったのだけれど、それでも挑んでみたいと思ったのだった。
投稿料は2000円余りだったが渋る理由はなかった。ただ、投稿した歌に自信を持っていたわけではない。それでも療養詩歌を作ると決めてやってきたこの一年が、決して無駄ではなかったことを確かめたいという気持ちもあった。
短歌を詠むのは下手でも、詩歌を読む目を培うことにはできるだけ時間もお金も費やしてきたつもりだ。
まだまだそれも力及ばないけれど、少なくとも短歌を詠みはじめた頃よりは、歌の良し悪しが少しなりとも分かってきたと感じている。
その結果はまだ分からないけれど、それでも療養詩歌を掲げて、誰かに指導を仰ぐでもなく、結社に属するでもなく、ただひたすらに自分自身と向き合って過ごしてきたこの一年は無駄ではなかったのだと思う。
長く険しい道のりだったし、それはこれからも変わらない。持病を抱えながら創作を続けることの厳しさは、この一年嫌というほど思い知ることになった。
しかしあれほどプロ作家になってほしいと執着していた両親にこの結果を報告したところ、「お前は小説よりも詩歌の方が向いているのかもしれないから頑張りなさい」と父に云われて、少しばかり肩の荷が降りた。
短歌をもっと上達させていきたいという思いも改めて芽生えたし、ふたたび短歌の折本を作りたいという思いも出てきた。
第四回笹井宏之賞落選作品50首を収めた短歌の折本です。
病める夏の日々を詠んだ、ゴシックな療養短歌を収めています。
この恋も忘れてしまう錠剤は不老長寿の薬となって 「しにたみのおさしみ」
きみに告げたいの「おさしみ」としか云えないままで
ハルシャギク世界の果てをも埋め尽くし燔祭の焰を待つ初夏
まだまだ時間は要するけれども、地道に詩歌の道を歩んでいきたい。
そして今後とも目標を掲げて、それに向かって努力を重ねていきたい。