ANIRON

ひとりごと日記

2022.09.28 親を許す/許さないのグレーゾーンに踏みとどまること

鈴木裕『無(最高の状態)』を先日読んだ。

毒親のもたらす「悪法」という認知のスキーマによって、歪んだ形で物語を作ってしまい、その認知に囚われることで「私」の苦しみは増す一方で、これを是正するためのアクションがいくつか語られるのだけれど、私にとっては毒親毒親であったと客観的に認識するのに、これほど的確な本はないだろうと思う。

「悪法」には「放棄」「不信」「剥奪」「欠陥」「孤立」「無能」等々、18種類があり、この大部分に私は当てはまった。

例えば「放棄」には

この悪法を持つ人は、家族・友人・恋人などの親密な人たちに、どうしても全幅の信頼をおけません。そのせいで、「どうせ私は最後はひとりになるのだ」や「いまは親しげな人もすぐに消えてしまう」といった感覚につきまとわれます。幼少期に親から十分な世話をされなかったり、入院などの理由で長期にわたって養育者と離れた人に多い悪法です。

この悪法を持つ人は、いつも人間関係に不安を感じるせいで、付き合い方が重く、そのせいで親しい人との仲が壊れるケースをよく見かけます。「自分はいつも捨てられる」との思いが強い人も多く、人間関係が生み出す不安に耐えられずにコミュニケーションを避けたり、自分から相手との仲を壊すことも珍しくありません。

とある。

私は幼少期、祖母の元で育てられたこともあって、母親との信頼関係をうまく築くことができないまま育った。成長してさまざまな人たちと付き合う中で、上述のような思いを抱くことが度々あり、それは今現在も続いている。

他にも「剥奪」には

「自分が求める感情的なサポートを得られない」という感覚をもたらす悪法です。

「アドバイスを求められる人がいない」「精神的にささせられていると感じたことがない」などの気分にとらわれ、いつも「何かが欠けているような気がするが、何が欠けているのかわからない」といった気分がぬぐえません。もっとも一般的な悪法のひとつで、子供時代に養育者から満足なケアを与えられなかった人に多く見られます。

自分の感情やニーズがよくわからない。家族や友人に過剰な愛情を向ける、または逆に親密な人間関係をあきらめてしまう。自分の気持ちを他の人と共有しない。誰かにとって自分が特別な存在だと感じたことがない。人生で支えになってくれた人はほとんどいない。

このような行動や感覚にとらわれがちな人は、「剥奪」の悪法を持っている可能性があります。

とあり、私は幼少期から重い偏頭痛を持つ母のケアをしなければならず、調子が悪いと云っても「お母さんも具合が悪いの」と相手にされないことが続いていた。

自分の気持ちを受け止めてもらっているという感覚を母親との間に抱くことができず、10代後半ごろは母親から自立しようと焦るあまり、上京して随分と無茶な真似をして統合失調症を発症した。

「悪法」の数々を見ていると、それまで母親に対して「いい加減過去のことは水に流すべきだ」という思いもあったし、30代に入り「いい歳になったんだから、親を許さないなどというのは大人として情けないことだ」という思いを抱いてきたけれど、それでもやはり適切な養育環境ではなかったのだなと冷静に判断できる。

かといって親を許す/許さないの二極に自分の身を置くことはそろそろ疲れていて、「許していいし、許したいという気持ちを持つことを否定しなくてもいい。ただし、その後発症した適応障害は医師によれば母の影響も大きいので、極力物理的・精神的に距離は置く」という、医師曰く「グレーゾーン」なところになんとか身を置けるようになったと感じている。

それもこれも主人の存在あってのことで、主人がいなければ、新たな居場所を築くこともできなかったし、アイデンティティを少しずつでも構築しようとすることもできなかった。

そのことには感謝したいし、認知のスキームを認識したことで、私自身は幾らか気が楽になったと感じている。

最近は『暁の天使たち』を中学時代ぶりに読み返していて、シェラ・ファロットにはエンパワメントされるところが大きい。

もともと好きなキャラクターではあったけれど、同棲時代以降は特に彼の存在を意識することが多くなったように思う。

自ら血を引く暗殺者一族を滅ぼし、主であるリィとともに、リィのいた世界へと飛び立った彼のメンタリティは、まだ「侍女」然としていて、おそらくそれは今後も変わらないと思うけれども、そうしたスタンスに自分の身を収めることが、私としてはもっとも生きやすい道だと感じている。

そんなお荷物になるわけにはいかない。この人が行くところには──それがどこであろうと──必ず同行できる自分でなくてはならない。当のリィにも話したことはなかったが、シェラが自分自身に密かに課した誓いだった。──p11

 

「あなたの息子さんはわたしの命の恩人だからです。こういう言い方をするとあの人は嫌がりますが、わたしは自分の命のある限り、あの人に従います。──p149

それは何も主人に求められたからそうしているというわけではなく、自発的にこのような秩序に自分を位置づけたいという私の意思によるものだ。

それは健全なパートナーシップのあり方ではないのかもしれないし、フェミニズム論者から見れば鼻つまみものだろうなと思うけれども、そうしたあり方で夫婦関係がより良い形で保たれるのであれば、私自身はそれでいいと思っている。

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そうして新たな秩序の中に自分を位置づける作業がどうしても必要であって、秩序のないところに自由はない。それはあらゆるレベルの共同体において自明のことだろうと思う。

そして私はその新たな秩序に自分を置くことを選び、主治医もそれに賛同してくれた。そうして現に今こうして精神のバランスが保たれつつあるという現状を鑑みれば、それ以上に必要なことなどない。

 

 

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