ANIRON

ひとりごと日記

2022.11.13 ウィロー読書会と漢詩読書会

愛猫・冴ゆの調子がすぐれず、どうしても最悪の事態を想定してしまって、朝はひとりベッドで泣いた。そうして気落ちして昼頃起き、主人がしばらく窓辺のポエングで本を読んでいたので、私も気が進まないながらも正岡子規『仰臥漫録』を読みはじめた。

これは元々『暮しの手帖』を読んで、そこで紹介されていた日記のひとつとして挙げられていたのだが、子規には前々から関心があったし、療養詩歌を作っている身としてはぜひ読んでおかねばならないと思ったのだった。

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読んでみると、子規の食事の記録や日々の体調のことなどが克明に綴られるとともに、窓辺から見える鳥や虫などの様子もつぶさに書かれている。

子規の俳句は写生一辺倒で、あまり面白みがないと思っていたのだけれど、「病者の目を通じて見た世界」というものがそのまま俳句として、あるいは詩歌となることを、私は強く意識してきたので、これまで通念的に考えていた写生というものの奥深さや、その風景を切り取る「目」を強く意識せずにはいられない。

病牀のうめきに和して蝉の声

 

病人に八十五度の残暑かな

 

秋もはや塩煎餅に渋茶哉

など、病に臥せる日々と景物とが巧みに組み合わされて、写生を通じて病者の目が雄弁に物語るさまを読むのは、痛ましくもあり、また病を抱える人間として、たくましさも感じる。

ちなみに子規の食事を見ていると、まだまだ冒頭部を読んでいるということもあって、私などよりもよほど食欲が旺盛だと感じる。

九月五日 雨 夕方遠雷

朝 粥三椀 佃煮 瓜の漬物

昼 めじの刺身 粥四椀 焼き茄子 梨二つ

間食 梨一つ 紅茶一杯 菓子パン数個

夕 鶏肉 卵二つ 粥三椀余 煮茄子

  若和布(わかめ(二杯酢かけ)

おそらく段々と食が細っていくさまが描かれていくのだろうけれど、これだけ食べられていればまだ御の字という気もしてしまう。

そして日々粥を食べている私などはシンパシーを感じずにはいられない。間食はほぼ食べないし、昼も抜くことが多いけれど、こうして食事の記録がそのまま闘病記録となるのは、ごく当たり前のことなのかもしれないけれど、私は食べることを記すことを忌避してしまうので、もう少し記録などをつけた方が良いのかしらなどと思う。

そうして主人も好きな本を読み、私も読みたい本を読む、ブルーベリー読書会改め、ウィロー読書会をしていると、主人が兼ねてからの希望だった江戸漢詩読書会をしないかと誘ってくれたので、その流れで読書会をすることになった。

江戸漢詩選 <a href=*1 (岩波文庫 黄 285-1)" title="江戸漢詩*2 (岩波文庫 黄 285-1)" />

江戸漢詩選 *3 (岩波文庫 黄 285-1)

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江戸漢詩選 *6 (岩波文庫 黄 285-2)

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テキストは主人によって下巻を指定されたので、下巻の冒頭から丹念に読んでいく。

漢詩は学生時代には主人の影響を受けて、唐詩選や李白などを読んできたし、私自身は六朝詩が好きで、曹植を愛しているけれど、ここ数年はすっかり遠ざかってしまい、読むのもおぼつかなくなってしまった。

主人はテキパキと読んでいく中、私の朗読はたどたどしくて恥ずかしかったが、それでも四篇を註釈、現代語訳も含めて読んだ。

艶詩という概念が日本の江戸時代ではあまり受け入れられていなかったのは、六朝詩に対する批判が強かった影響もあるのだろうか。主人は荻生徂徠などをはじめとする古辞派はもっぱら唐詩選を礼賛していたというから、艶詩の体現である『玉台新詠』などの六朝詩はあまり評価されていなかったのだろうと感じた。

私は『玉台新詠』から六朝詩を好むようになった人間なので、むしろ艶詩の方が好きなのだけれど、江戸時代には思想を詠まぬ漢詩はけしからんという風潮があったらしく、それを打破したのがこの巻の冒頭に掲げられた、市河寛斎「北里歌」だったらしい。

「北里歌」は遊郭の吉原の艶ごとを詠んだ詩で、日本の遊里風俗詩の端緒になったという。

これに関して市河は「詩を作る可からざる者無し。只だ其の格を上下するに在るのみ」と友人と詩について論じて語ったのだという。

これに関しては時空を超えた今の詩作においても大いに勇気づけられる言葉だなと感じて、ノートに書き留めたのだった。

読書会自体は読書会というよりも漢詩講読会と云うのが妥当な内容だったが、またこうして漢詩に触れられる喜びを噛み締めつつ、改めて詩作や作歌について考える契機となればと思う。

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